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tofubeats 『lost decade』 『lost decade outtakes』 『university of remix』 『college of remix』

lost decade

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university of remix

university of remix

 

 神戸在住のプロデューサー・トラックメイカーtofubeatsの1stアルバム『lost decade』、及び同時リリースの『lost decade outtakes』『university of remix』『college of remix』。

 彼については、WIRE 08に出演が決まった時や、CD-Rでの最初の音源集『HIGH SCOOL OF REMIX』が話題になった時に知ったのですが、その時はピンと来ず、ネットカルチャー発のヒップホップ寄りのトラックメイカーという認識でした。

 彼の才能をやっと理解できたのが、2011年の5月に開催された、名古屋のDJユニット家畜眼鏡によるsubstance vol.2というイベントに出演した時。okadada、DJ濱、DJニッチなどのDJも出演していて、初めて現場でネットレーベル周辺の文化に触れてショックの連続でしたが、一番の衝撃が彼のライブでした。ベースミュージック・ヒップホップ・J-POPなどの要素が並列的に存在していて、踊れて、コール&レスポンスできて、シンガロングできてと、いいとこ取り。楽しさや切なさなどのシンプルな感情をオープンに、かつJ-POP的キャッチーさで展開しながら、しかも内に閉じていくようなサブカル文化系的メンタリティーを失わないそのバランス感覚が絶妙で、夢中になってしまいました。(その後5回tofubeatsのライブを見る)

 

 今回リリースのアルバム『lost decade』は、既にクラシック感のある#15"水星"を筆頭に彼の多面性と叙情性が詰め込まれたアルバムです。

 刈谷せいらとの#2"SO WHAT!?"や、南波志帆との#15"lost decade"などは、彼のアイドルポップス~J-POPへの憧憬が詰めこまれた、華やかさを纏ったキュートでキャッチーな曲。G.Rinaとの#11"No.1"は、そのJ-POP志向をファンクR&Bに舵を切ったようなセクシーな曲で、粘りつくようなベースが印象的です。

 #5"m3nt1on2u feat. オノマトペ大臣"は、スネアの連打がTRAP的で、dj newtownの"flying between stars(seikan-hiko)"にも聴けるような、縦横無尽に切り刻むボーカルチョップ・カットアップによってハイテンションのグルーブを生み出していて圧巻です。彼のトラックメイキングの巧みさ、センスの良さ、リミキサーとしての人気ぶりが分かります。

 個人的に大好きなのは、スローな展開の続くアルバム後半の#9"夢の中まで feat. ERA"~#14"synthesizer"までの流れ。繰り返しの中から生まれてくる彼独自の緩やかなグルーブ感が遺憾なく発揮されていて(キープ・クール・フールの国分さんはブギー感と表現)、彼の住む神戸郊外のアンニュイなムードを感じさせます。特に#12"touch A"はモタったピアノとシンセの生み出すノリが独特で愛おしく、やるせない。同じメロディーをテーマに"touch A"から"touch F"まで6アレンジが収録されているEP『touch』も聴くとより楽しめます。

 この緩やかなグルーブ感は『lost decade outtakes』の方には、部屋の匂いのようにしっかりとこびり付いていて、特に『lost decade』未収録の#7"KAGE"は、彼のパーソナリティも垣間見えて、生々しさとともにナチュラルな愛らしさすら感じます。

 同時リリースのリミックス集『University of Remix』『college of remix』には、彼の仕事の中でも重要なlyrical school(tengal6)の"プチャヘンザ!"が収録されていますが、彼のリミックスワークスの中でも代表的な、曽我部恵一band"ロックンロール"、YUKI"わたしの願い事"、ももいろクローバー"ももいろパンチ"などは収録されておらず、これは本当に残念…。収録曲の中では、リミックスでは毎度おなじみ9nineの、シンセが印象的な"夏 wanna say love U (tofubeats remix)"、同年代という繋がりもあるねごとの"sharp #(tofubeats remix)"などは、原曲のムードを残しながらも彼のキャッチーなセンスが凝縮されていて大好きです。

 

 彼の才能も突然変異のように生まれてきたのではなく、オノマトペ大臣はもちろん、okadada、tomad、seiho、avec avec、thamsbeatなどのDJ・トラックメイカーたちとの交流によって発展・変化してきたと思います。そして、このtofubeatsのアルバムを聴いていると、同い年で並び称される才能だったimoutoidに思いを馳せてしまいます。もし彼のアルバムが出ていたとしたら、どんな内容になっていたのか…。