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Swindle 『Peace, Love & Music』

 

ピース・ラヴ・アンド・ミュージック

ピース・ラヴ・アンド・ミュージック

 

  ロンドンのトラックメイカー/DJのSwindleによる、2013年の『Long Live the Jazz』に続いてのフルレングスでは二枚目となるアルバムです。

 ダブステップやグライムのような低音を強調させたUKのクラブミュージックと、自身の持つジャズの素養を混ぜあわせた音楽性で、独自のスタイルを築き上げていた彼ですが、今作は前作後にツアーを行った経験も詰め込まれ、前作以上にトラップやトロピカルなど様々なジャンルの混交が進んだ作品となっています。曲名にも「Denver」「Shanghai」「Tokyo」などの地名が名付けられるなど、その地に因んだオリエンタルな要素も曲の中に盛り込まれています。

 前作がジャズの思考回路でダブステップという言語を扱っていたダブステップ寄りの作品だったのが、今作はダブステップの音楽システムでジャズ言語を扱っているような、よりジャズへ接近したヘヴィーウェイトジャズといった印象を持ちました。ダブステップやグライムという新しい解釈を持ち込んでジャズを蘇らせるそんな姿勢はRobert Glasperなどの現代ジャズの流れとも共通しているなと思いました。

 Swindleはベース・ミュージックにおける音圧というマッチョな価値観だけでなく、ジャズとファンクの持つしなやかな抑揚とグルーヴをもってして、他とは一味違ったベース・ミュージックの価値観を提示しています。実際にDJやライブのパフォーマンスを見ると、こんな端正な作品を作る人とは思えないぐらい、ハイテンションに大暴れするやんちゃな彼ですが、今作を聴くと、彼自身の中にある"ロンドンの路上にたむろする不良性"と、"ジャズにそもそも備えられている不良性"が重ねあわせられた、二重の不良性が根底にあることが、人懐っこくも突き放すようなこの作品の面白さに繋がっているように思いました。