ライブテープ

監督:松江哲明 / 日本 / 製作年度: 2009年 / 上映時間:74分


冒頭に長澤つぐみが登場して、その作った感じにギョッとしていたら、
カメラの被写体が前野健太に切り替わる。
やっぱり色気のある声で、歌っているだけで画面に雰囲気がでてくる。


しばらくして途中から松江監督が(80%ぐらいで歌っているという前野健太に対して)「120で」、
「サングラス外しましょう」(戸惑いながらもサングラスを外す前野健太、そして近くの子供に渡す)、
「もうちょっとカッコ悪く」、などと各所で指示・介入していて、
ただのドキュメンタリーではなく、監督も含めた半セルフドキュメンタリーなのだと気付かされました。
途中で二胡吉田悠樹と合流して一曲。サックスのあだち麗三郎とも一曲。
そしてカメラのフレーム内に松江監督が入り込み、
前野さんに『天気予報』という曲を作った由来を尋ねる場面で、
彼も監督も親を亡くしたという共通点が明らかになり、
この映画はセルフドキュメントなのだなという気持ちを強くしました。


最後は井の頭公園に先に登場した二人を含めた"David Bowieたち"のメンバーが
ステージに待ち受けていて『天気予報』を演奏。
そして続いて前野健太一人で『東京の空』を演奏。
最後のこの曲では演奏と映像が融け合って主従関係を失い、
歌の世界を表現するように公園の風景が映し出され、
公園の風景のBGMのように歌が響く。
そのバランスがとても叙情的で切なさを感じました。