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坂本真綾『LIVE TOUR 2013 "Roots of SSW"』

LIVE TOUR 2013 “Roots of SSW”

LIVE TOUR 2013 “Roots of SSW”

 

  全曲作詞・作曲及びセルフプロデュースにて制作された坂本真綾のアルバム『シンガーソングライター』。そのアルバムに伴うツアーの内容が収録されたライブアルバム『LIVE TOUR 2013 "Roots of SSW"』が配信限定でリリースされました。

 ここでは以前の彼女が背負っていたシリアスなドラマ性や重厚なアーティスト性は一旦脱ぎ去られ、「アーティスト坂本真綾」像と「ひとりの女性としての坂本真綾」像が自然な形で重なり合わされています。

 最新作から採用された#5"ニコラ"、#6"Ask."では、過剰なドラマ性を抑えた穏やかなストリングスとゆっくりと立ち上がるヴォーカルが印象的で、彼女の生活の中における音楽の存在感が伝わってきます。輪郭がくっきりと浮かび上がるような地に足の着いたアレンジで、ストイックである一方で、声と楽器の響きの美しさがシンプルに伝わってきます。

 切実さを持っていた過去の楽曲たちも解釈し直され、新たな軽やかさを得ています。特に#4"私は丘の上から花瓶を投げる"や、#10"cloud 9"などは、彼女自身の声の響きの変化とともに、低音部をアタック感を弱めて歌うように変化していて、今までにない開放感とカタルシスをもたらしています。

 今回のツアーにはギターとして今堀恒雄が参加していて(約10年ぶりとのこと)、彼らしいリズムの切れ味抜群のプレイと、Unbeltipo Trioでも活動を共にするドラム佐野康夫との息のあったコンビネーションも聴くことができます。特に#14"スクラップ~別れの歌"では全編に渡って弾きまくる・叩きまくる!ここでは原曲にあった切実さは消え去り、坂本真綾のどこまでも突き抜ける力強いヴォーカルによって、全てを祝福するようなハイな幸福感がはじける空間を作り上げています。

 しかしこのライブを見た身からすると、実際にツアーで演奏されていた"everywhere"が収録されていないのは残念です。間違いなくライブでのキーになっていた曲なだけに。それを差し引いても音のみだからこそ、彼女のライブアーティストとしての成熟ぶりが伝わるアルバムでした。