20190429 早見沙織ライブへ行った

 東京国際フォーラムホールAで行われた早見沙織さんのライブへ行きました。

 音数の少ない曲や弾き語りの曲での緊張感ある歌の表現力は素晴らしく、さすが役者と思わせる繊細さと迫力がありました。

 彼女は声の立ち上がりが遅れてくるタイプなので、音数の多い曲やロックサウンドでは声が埋もれてしまう傾向があるように感じました。また声がアダルトな響きを持っていて歌謡曲然とした曲ではレトロな印象がより強まるため、現代性とのバランスが上手く取れている「Bleu Noir」が好印象でした。ライブでは音色やノリの部分でロック寄りのバンドと噛み合う瞬間が少なかったので、サウンド的な面も含めて今のライブ体制は再検討の余地があるように感じました。

 中盤の映像は映し出される内容が即物的過ぎて曲の世界観を広げるより妨げていたので、あまり好きではなかったです。

20190414 鈴木みのりライブへ行った

Zepp NAGOYAで開催された鈴木みのりさんのツアーの最終公演に行きました。
やっぱり8000人のマクロスオーディションを通過した人だけあって当然のように歌が上手い。とにかく歌声がパワフルでポジティブな力に溢れていました。ベースのキリンジ千ヶ崎さんとドラムのノーナリーブス小松さんの肉感的な演奏ともバッチリハマっていて、こういう曲が得意なんです!という自信や楽しさが伝わってきました。
持ち味であるポジティブな歌声は、内省的な曲でも声の明るさが前に出てくるので重々しくならない良さもあり、ブライトに響きすぎて感情がマスクされていってしまう面も見えました。坂本真綾さんのカバーである誓いを披露した時にはそれを強く感じて、本人は大ファンである彼女の曲を思い入れを込めてカバーしているけど、曲が持っているネガティブなものを多分に含んだ複雑な感情を表現するには歌声が朗らかすぎて、曲としては淡白な印象が残りました。
そんな1stアルバムや1stツアーらしいガムシャラさも、本人が意識してあえて打ち出している様子も伺えたので、実は戦略的で強かな人な部分を持っている人なのでしょう。

作曲家hisakuniについての個人的まとめ

 最近はアニメ・声優~アイドルの楽曲を中心に手がける作曲家hisakuniが作る曲に注目しています。

 ファンキーなグルーヴを中心に据えながらキャッチーなメロディーを両立させるリズムオリエンテッドな楽曲志向、激しいリズムと呼応するシンセを中心とした華やかなアレンジ、そして様々なアーティストやテーマに対して柔軟にアプローチしていく細やかな対応力が特徴の作曲家です。

 

 彼の存在を知ったのは声優・内田彩へ提供した楽曲を通じてでした。

 

 2015年の内田彩の2ndアルバム『Blooming!』に収録された「With you」は、ピッチアップしているような内田彩の強烈なアニメ声ヴォーカルと完璧にマッチした極彩色の鮮やかなエレクトロハウスで、クオリティの高さに大きな衝撃を受けました。ソリッドなハウスのビートの上にフューチャーベース的なキラキラと輝くサウンドサンプルが次々に注がれ、非現実的なほどにアッパーでファンシーな世界が広がります。

 この曲は彼女のファンにも強いインパクトを与えたようで、hisakuniと内田彩のクラブミュージック系楽曲はこの後も続いてリリースされていきます。よりベースとキックが力強くなったEDMチックな「Floating Heart」、ボルチモアブレイクスのビートを取り入れたパーカッシブな「Everlasting Parade」などを経て、この路線での洗練の限界まで達した象徴的な曲が内田彩の3rdアルバム『ICECREAM GIRL』収録の「Yellow Sweet」。
 

 イントロ~メロ~サビと転調を繰り返しながら、叩きつけるスネアとブーミーなベースが一体となりながら16ビートのグルーヴを生み出すファンキーなフューチャーベースポップスとなっています。

 フューチャーベースと言えばテンポが早いものがほとんどの中、ベースが曲全体を牽引しながら、抑えめのテンポでシンコペーションの効いた変則的なリズムを組み上げていて、流行のサウンドを取り入れながらさらにひとひねりのアイデアを加えるhisakuniの真骨頂とも言える一曲です。

 このファンキーな路線の楽曲には、よりニューウェーブに寄った村川梨衣baby, My first kiss」、トロピカルハウスに寄ったmaimie「ハロー・ニューワールド」などもあります。

 

 

 

 インターネット上で確認できる限りでは、2005年に愛媛大学のジャズサークルで結成された4人組ジャズヴォーカルバンドtock-pangが彼の音楽キャリアのスタートとなっています。その時に作られた曲は現在作っているものとはかなり距離が離れているようにも感じますが、流れるような心地よいメロディーと跳ねるようなスタッカートの効いたギターの演奏は現在の作風と共通するものを感じ取ることができます。
 (ちなみにバンド内に田中が二人いたため当時からhisakuniとして記名することがあったようです)

  元々アコースティックなジャズバンドのギタリストだった彼がジャズ色もなくギターの音色すらも全くないエレクトロニックな曲をいくつも作っていることにも驚きますが、それがハイクオリティかつ単純な模倣に陥らない独自性を持っているのも、彼の柔軟な対応力と吸収力の高さに依る所が大きいように感じられます。

 

 もちろんジャズの出自を活かしたバンドサウンドの曲にもユニークな曲があり、ストリングスとホーンの音色を取り入れたロックディスコな新田恵海「Colorful Parade」、ドラムが忙しなく動き回る上でハープやチャイムが軽やかに響くポストロッキンな「チョコレイト・ブギウギ」なども、彼ならではの華やかさとともに人懐っこい愛らしさを持っている楽曲です。
 

 

 

 これらの曲を聴くと、大きく一括りにされがちなアニメ声優の楽曲に対しても、各個人の細かな歌声やリズム感などの特徴を捉えて、寄り添うように楽曲の色合いを使い分けているのが分かります。個性が強い作曲家でありながらシンガーの色が失われないのは、対象のシンガーの個性を理解して曲をフィットさせていく、そんな細やかな対応力の持ち主であるからだと思っています。

 現在は女性に提供するエレクトロニックな楽曲の反応が良く、実際そんなタイプの曲では彼のユニークさが存分に発揮されていると感じます。しかしそれだけに留まらない鋭いセンスや幅の広さを持った作曲家であるのは間違いないと感じるので、彼のルーツの一つであるジャズやそれ以外の新たな要素を取り入れながら、ひねりを加えていく楽曲が今後登場することに期待しています。

Swindle 『Peace, Love & Music』

 

ピース・ラヴ・アンド・ミュージック

ピース・ラヴ・アンド・ミュージック

 

  ロンドンのトラックメイカー/DJのSwindleによる、2013年の『Long Live the Jazz』に続いてのフルレングスでは二枚目となるアルバムです。

 ダブステップやグライムのような低音を強調させたUKのクラブミュージックと、自身の持つジャズの素養を混ぜあわせた音楽性で、独自のスタイルを築き上げていた彼ですが、今作は前作後にツアーを行った経験も詰め込まれ、前作以上にトラップやトロピカルなど様々なジャンルの混交が進んだ作品となっています。曲名にも「Denver」「Shanghai」「Tokyo」などの地名が名付けられるなど、その地に因んだオリエンタルな要素も曲の中に盛り込まれています。

 前作がジャズの思考回路でダブステップという言語を扱っていたダブステップ寄りの作品だったのが、今作はダブステップの音楽システムでジャズ言語を扱っているような、よりジャズへ接近したヘヴィーウェイトジャズといった印象を持ちました。ダブステップやグライムという新しい解釈を持ち込んでジャズを蘇らせるそんな姿勢はRobert Glasperなどの現代ジャズの流れとも共通しているなと思いました。

 Swindleはベース・ミュージックにおける音圧というマッチョな価値観だけでなく、ジャズとファンクの持つしなやかな抑揚とグルーヴをもってして、他とは一味違ったベース・ミュージックの価値観を提示しています。実際にDJやライブのパフォーマンスを見ると、こんな端正な作品を作る人とは思えないぐらい、ハイテンションに大暴れするやんちゃな彼ですが、今作を聴くと、彼自身の中にある"ロンドンの路上にたむろする不良性"と、"ジャズにそもそも備えられている不良性"が重ねあわせられた、二重の不良性が根底にあることが、人懐っこくも突き放すようなこの作品の面白さに繋がっているように思いました。