高田暁について個人的まとめ

 アニメ系コンポーザー・アレンジャーの高田暁に今注目しています。

  気になる曲がことごとく彼の仕事だったことに気づいてから、色々知りたくなってwikipediaや彼のインタビューが掲載されているリスアニvol.12.1をチェックしました。音大出身のジャズピアニスト、他の作家の仕事も結構チェックしているということはわかりましたが、それ以上の詳細な音楽的ルーツなどは結局謎のままでした。彼の曲はスタイリッシュで人懐っこいメロディー、グルーヴのあるリズミカルなアレンジが特徴的。聴いていて楽しくなる作曲家です。

 基本的にはランティスからの仕事を中心にこなしているようですが、2013年に入ってからはNMB48の「僕らのユリイカ」、AKB48のサブユニットのnot yetの「ヒリヒリの花」の作曲など非アニメ系の楽曲も手掛けています。(これはコンペで勝ち抜いたということなのでしょうか?)


 彼の楽曲の特徴の一つとして、動きまくるベースラインがあります。


【ラブライブ!】 μ's 1st Single 『僕らのLIVE 君とのLIFE』 - YouTube

 この曲では編曲のみ担当ですが、偏執的とすら思える忙しないベースラインが躍動感と疾走感を与えていて、シンコペーションの効いたリズムによって軽やかなグルーヴを生み出しています。
 また彼が作編曲を務めた曲の中で、最も有名な曲の一つと言える『氷菓』のED「君にまつわるミステリー」も、ロック的な曲ですがギターでなくベースが中心になって組み立てられている一曲です。ベースがウネる!


Hyouka ED 2 [君にまつわるミステリー] "Kimi Ni Matsuwaru Mystery ...



 現在彼の曲に夢中になっている自分のような人間に、その存在を知らしめたのは、ラブライブ!~μ'sとStylipsへ提供した楽曲だと思います。


ラブライブ! 【きっと青春が聞こえる】FULL - YouTube


【ラブライブ!】Love Live! μ's 3rdシングル - 「夏色えがおで1,2,Jump!」 - YouTube

StylipSデビューシングル「STUDY×STUDY」ショートサイズPV - YouTube


【StylipS】「Choose meダーリン」Music Video - short ver. - - YouTube

  作編曲を務めるStylipsの「Choose me♡ダーリン」は、Cortijoのようなコンガ・ティンバレスを駆使したファンキーなパーカッションと、ブライトな音色のホーンがとにかくアッパー。ひたすら脳天気でキャッチーなサンバファンクロックです。

 このラテン路線はアニメ『侵略!イカ娘』でも展開されていて、「イカアイス食べなイカ?」はルンバ~サルサ的リズムとホイッスルが印象的な曲。「いイカいイカはイイでゲソ!」はクラベス・ティンバレススティールパンのパーカッションが各所で鳴り響くデジタルロックになっています。


イカアイス食べなイカ? - YouTube


いイカいイカはイイでゲソ! - YouTube


 彼の楽曲のもう一つの特徴は、アレンジでも多用されるパワフルなホーンです。そのホーンとベースが暴れまくるファンキーな楽曲は彼の得意とするところ。『ふたりはミルキィホームズ』のOP「ぐろーりーぐろーいん☆DAYS」はホーンの重量感に圧倒される高速ファンクロック。『百花繚乱サムライガールズ』のED「恋にせっせ通りゃんせ」は間奏のシンセソロなど、P-Funkを意識したように思えるゴリゴリのヘヴィファンクチューンで、他の曲からも時折感じられるブラックミュージックの影響が強く出ている曲です。

Milky Holmes ふたりはミルキィホームズ OP ぐろーりーぐろーいんDAYS ...
【高音質】百花繚乱 サムライガールズ ED 恋にせっせ通りゃんせ FULL - YouTube

  

  『ハイスクール DxD NEW』のED「らぶりぃ♥でびる」は、The Specialsのような2トーンスカテイストの曲ですが、ここでも飛び出るブライトな音色のホーンは、枯れ感皆無で力強いスカロックになっています。バッキングのキーボードなんかは旬のブギー感もあるような。

 この路線で作られたのが『ラブライブ』のシングル「タカラモノズ」で、よりファンクロック色が強まっています。

 
歌詞付き高音質 ハイスクールD×Dnew 停止教室のヴァンパイア ED らぶりぃでびる - YouTube

タカラモノズ/Takaramonozu - YouTube


 彼の楽曲を聴いていて感じるのは、生ベースを多用するなど、やはりベースを重視していることです。ベースとドラムのコンビネーションを中心として作られている楽曲のグルーヴが、彼の曲を特徴づけているように思います。そして華やかなホーンの厚みと優雅な響き。カラフルな明るさを象徴するものとなっています。

 ロック畑・クラシック畑出身の人はアニメ系の作曲家の人の中でも多いですが、彼のようにブラックミュージックのファンキーな要素をポップな曲の中に自然に織り込める人は少ないように思いますし、特にリズムの切れ味の鋭さが素晴らしいです。

 元々ピアニストということもあり、ギターよりもピアノやシンセホーンの方がアレンジの中でも象徴的に使われています。意表を付くようなコードチェンジや転調も得意としていて、同じ曲の中で同メロディーで異コードなんてのもあるようです。トリッキーな作品として特筆したいのは、Stylipsの2ndシングル『MIRACLE RUSH』のカップリングに収録されている「Honey Groove」です。この曲では2番サビ後のブリッジ部分で、キックが4つ打ちのイーブンを保ったまま、他のパートは3連符のリズムへと移行していきます。このポリリズミックな仕掛けには驚いたとともに彼の挑戦的な曲作りに感心しました。

 かなり色々なタイプのジャンルの曲にチャレンジしているので、次にどんなタイプの曲が飛び出すのか楽しみです。(ただエレクトロハウスっぽい曲は個人的にはあんまりピンと来ないですが…)

Limited Express (has gone?) 『JUST IMAGE』

JUST IMAGE (ジャスト・イメージ)

JUST IMAGE (ジャスト・イメージ)

 前作から約4年ぶりとなる、東京のスリーピースバンドLimited Express (has gone?)の4thアルバム『JUST IMAGE』。

 彼らといえばポップでフリーフォームなオルタナ~ハードコア~パンクの流れのイメージでしたが、今作で展開されているのはそこからさらに歩みを進めた姿。オルタナティブロックの破壊的なディストーション、ポストパンクのフィジカルなグルーヴ、ポストハードコアの怒涛のテンション、そして彼らならではの捻りのあるアイデアがひとつになって、渦のように引きずり込んでいくアルバムです。さらにノイジーで脱構築的かつポップで間口の広さを持っていた彼らの音が、今作では洗練すら感じる域にまで達しています。今までに比べるとスッキリとした風格のある音で、これは7月のライブでも同じ印象を持ちました。レコーディングやミックス段階の変化はもちろん、それより以前の段階でも変化し、自らのあるべきサウンドへの自意識がメンバーの間でも収斂されてきたのかなと思います。

 完成度の高さは間違いなく過去最高で、到達点どころか新たな次のフェーズに入ったと感じさせる充実のアルバムです。

 

 
we love this country like banana / Limited Express ...

ポストロックの名盤を考えてみる

【音源あり】これだけは聴いて欲しいポストロック超名盤まとめ

http://ticketcamp.net/live-blog/postrock/

  ポストロック名盤まとめの記事を読んで、自分もmice paradeの『mokoondi』は大好きだなーと思って、個人的に思い入れのあるポストロック名盤を考えてみました。
 ポストロックはUSハードコアの流れから誕生したアメリカ発のムーブメントだと自分は思ってるので、USのバンドが多くなりました。

 ちなみにここで挙げたアルバムの殆どが2000年前後のリリースです。その時期ポストロックシーンをフォローしていた雑誌は少なく、after hoursやFEADERやCOOKIE SCENEぐらいだったでしょうか。パルコのフリーペーパーFlyerもWAVEのスペースで関連作品の情報を掲載してくれていました。
 でしたので新譜情報を得るのはレコード屋がメインでした。渋谷warszawa(その後のsome of us)、高円寺LINUS RECORDS、名古屋stiff slack、FILE-UNDERなどから得た情報には大変お世話になりました。日本でのポストロックムーブメントは雑誌やライブハウスからでなく、レコード屋から浸透していった動きのように思っています。

Spiderland

Spiderland

 このSlintをはじめBastro、Rodanなどの90年代初頭の「プレ・ポストロック」ともいえるバンドたちの審美眼を土台として、様々なバンドが音楽性をその先へ進め、ポストロックへと発展させていきました。このSlintの91年の2ndは静と動のダイナミックな展開、重々しく不穏なサウンド、そしてバーストするギターが異様な緊張感をもたらしています。多くのバンドがSlintのサウンドを参照していますが、これほどの完成度に到達しているバンドは殆どいないと思います。



Sea & Bells

Sea & Bells

 今だとポストクラシカルなどの呼称で括られるであろう、Rachel'sの2nd。それぞれの楽器の響きを重視した室内楽的なストリングスが、ピアノと混ざり合って耽美的に響いてきます。このアンビエントでダークなムードは、彼らの出自であるポストハードコアからの影響を感じさせます。今のポストロックと呼ばれるバンドに比べると控えめな印象ですが、抑制されているからこそ、その美しさが引き立っています。




What Burns Never Returns

What Burns Never Returns

 King Crimson『Discipline』やMiles Davis『On the Corner』などの影響をハードコア解釈によって結実させた、マスロックという概念の始祖的存在Don Caballero。この3rdを聴くと、彼らがロック系に限らずミニマル、フリージャズ、ラテン・アフロなど様々な音楽に触手を伸ばしていたのが窺い知れます。トリッキーなリズムと荒っぽいジャンクな響きの取り合わせが問答無用でカッコイイです。緻密でありながら、欧州や日本のバンドにはないUS的な大らかさがあるように思います。




Camoufleur

Camoufleur

 David GrubbsとJim O'rourkeという天才SSW2人による実験性とポップさを兼ね備えたGastr del solのラストアルバム。Tortoiseと彼らの存在によってシカゴ音響派という括りが世界的なものになりました。アメリカン・ルーツミュージックを中心として、ロック、フォーク、ミニマル、エクスペリメンタル、エレクトロニカなど形を変えて様々巻き込みながら展開される、音の万華鏡のようなアルバムです。
 彼らの作品中最もポップなアルバムですが実験性も失われておらず、聴く度に違って聴こえる楽しく不思議な作品です。

 


Eph Reissue

Eph Reissue

 fridgeはUKのバンドで、そのためかUSのポストロックのバンドたちとは違ったスマートなムードを持っています。抽象的かつシュールなサウンドは、テクノやジャーマン・ロック、プログレからの影響を強く感じさせます。kraftwerkとかCanとかNeu!とか…。まさにポストロックとしか形容する他ない絶妙な音楽性。

 


American Football

American Football

  基本ヴォーカル有りということもあり、American Footballはどちらかと言うとインディーロック、エモに近い立ち位置だと思いますが、軽やかなリズムと美しいアルペジオのギターワークは、確実にポストロック的審美眼を通過しています。インディーロック・エモの切ない楽曲を清冽に響かせ、ポップソングとして昇華させた彼らの功績は大きく、今でも度々言及され新たなファンを生み出しています。文脈関係なくロック・ポップス作品としての普遍性も素晴らしいです。




Dream Signals in Full Circles

Dream Signals in Full Circles

 世界的なポストロックの流れを決定づけたかもしれないtristezaの2nd。クリアトーンのギター(と浮遊感あるシンセ)にたっぷりとディレイとリバーブをかけて透き通った音色で空間を埋め尽くす、このスタイルはこのアルバム以後世界的に定着しました。
 音色の快楽性をひたすらに追求した極上のヴェルヴェットミュージックで、その結果、今作ではほぼニューエイジ~イージーリスニングの境地にまで達しています。この衝撃は大きく、ポストロックの音色の共通認識をある程度世間に形成させたと思います。

 このアルバムまではThe Album LeafのJimmy Lavalleがバンドに参加しており、The Album Leafの2nd『One Day I'll Be On Time』は今作と兄弟作とも言える作品です。

 


Cold House

Cold House

 こちらもUKのバンドHoodの5th。叙情的に爪弾かれるディレイギターと、グリッチノイズなどのエレクトロニクスが親和性を持っていることを示しました。インディーロック系のヒップホップレーベル「anticon」とも交流し、ラップも取り込んでポストロック~エレクトロニカ~ヒップホップを横断する独自の音楽性を確立させました。その冷ややかな音像は、冬の夜空を思わせるような美しくもアンニュイな雰囲気を持っています。

 



Smile & The World Smiles With You

Smile & The World Smiles With You

 Steve Albiniプロデュース&エンジニアリングによる2nd。彼がエンジニアを務めていることもあり、楽器の響きが素晴らしく、美しく優しいギターとドラムに、ジャケットのように森林浴している気分になります。ただただこの音に浸かって漂っていたいと思わされる、とにかく爽やかな心地良い作品です。

 

 

 色々挙げてみると、ロックバンド的な編成で、ロックから零れ落ちてしまった音楽を、一時期は何でもポストロックとして扱っていたんだなと思いました。
 上でも挙げたCanやNeu!This Heat、HawkWind、Faustなどのジャーマンロック、プログレ系のバンドもポストロックの文脈から再評価が進みましたが、ポストロックはそれらの音楽と立ち位置的に親和性があったのと同時に、様々なバンドのインスパイア元になっていたと思います。

白石涼子さん音楽活動の個人的まとめ ~『R』 『In Bloom』 『GLITTER』+α~

 コンプレックスでもあると言うやや低くかすれ気味の声が特徴の、声量を活かした力強く伸びのある歌声が魅力の白石涼子さん。

 音楽活動は2004年に、國府田マリ子金田朋子神田朱未野中藍とともに5人組ユニットDROPSとしてはじまりましたが、ソロ活動は2005年11月リリースのミニ・アルバム『R』からキャリアをスタートさせました。

 

R

R

 『R』は、STARCHILDに所属するアーティストのunicorn tableUNSCANDALangelacan/gooeufoniusなどがそれぞれサウンドプロデュースを手掛けた7曲入りミニアルバム。ラジオから流れてきて、耳を奪われたのがUNSCANDALのプロデュースによる#2"虹色号に飛び乗って"。明るい曲調の中でも時折見せる憂いを帯びた声色、声優らしい歌いながら演技するような抑揚のある節回し、そしてハードなスカパンクサウンドに負けない声の強さに惹きつけられました。

 他の収録曲では、リードトラックであるunicorn tableのオルタナハードロックな#1"smile(^-^)"での伸びやかで爽快感ある声、室内楽的なストリングスが響くeufoniusによるメロウなフォーク#7"流れる雲を追いかけて"では、切なくも芯のあるハスキーな歌声など、色々な曲調に対応する器用さもあって、すごい人が登場したなーと思いました。

 

 続いて翌年4月にシングル『太陽のかけら』をリリースし、2006年7月にリリースされたのが1stアルバム『In Bloom』。 

In Bloom(DVD付)

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 今作ではLINDBERG平川達也川添智久・小柳"cherry"昌法が作曲・編曲いずれかの形で12曲中8曲に参加していて、作編曲ともにメンバーが手掛けた#2、#8、#11はLINDBERG色が強くなっています。

 #2"グッドモーニング・エブリバディ"は、抑揚のある爽やかなハードロックテイストの曲で、彼女の声のアンニュイな魅力と伸びやかさが凝縮された一曲。ロックテイストを残したままBメロで一瞬3小節だけレゲエ調になるところは、少しPoliceやSteel Pulseっぽいかもと感じました。

 #9"Vannila ~バニラ~"は大川茂伸による、リゾート感漂うモダンソウル・ファンク。シンセストリングスやホーンで華やかさが強調されていて、自然体で楽しげな歌声が印象的です。粘っこいベースのノリにも調和したヴォーカルで、リズム感もいい人なんだなーと思います。健全・健康的でありながら、ヴィヴラートから仄かにセクシーさが漂っていて、その自然なバランスが良いです。

 

 シングル4枚とカバーアルバム『R01』を挟んで、2009年8月にそのシングルを全て収録した2ndアルバム『GLITTER』をリリース。

GLITTER(初回限定盤)(DVD付)

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  ex.JUDY AND MARY恩田快人西川進らが楽曲提供していて、ロック色が強くなったアルバム。前回の1stリリース後2007年に喉の手術を行ったとのことで、製作がその時期をまたいでいるためか、一部の曲でハスキーさが強くなっています。 

 #2、#9のようなリズムが軽やかで、ヴォーカルも軽やかに流れていくような曲がやはり好みで、キュートさと大人っぽさのバランスの良さがよく出ているように思います。アルバムを通して聴くと、元々パワフルで重い声の人なので、ヘヴィな曲やモッタリした曲では、声も曲全体もより重々しく感じられてしまうように思いました。その意味で、このアルバムは期待した感じとはちょっと違って、1stほど聴きこむことががありませんでした。

 

 キャラクターソングで彼女の魅力がよく表れていると思うのは、『夏のあらし!』の名塚佳織との"君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。"。彼女の声が持つグルーヴ感が実感できるラテン・ファンク曲です。こういうファンキーな曲を歌いこなせるのはすごいなーと思います。

 『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』での中村繪里子との"キミはキミらしく"は、弾むブレイクビーツの上で抑え目のヴォーカルが優しく響く、楽しくも切ない一曲です。

 単独曲としては『ひまわりっ!』"きらきら ~Azami ver.~"。フォークトロニカ的なロック曲で、ディーヴァさながらに力強く歌い上げていますが、eufoniusの菊地創の軽やかなトラックとの対比のおかげで重くなりすぎることなく、爽やかな後味です。

夏のあらし!~春夏冬中~キャラクターソングアルバム

夏のあらし!~春夏冬中~キャラクターソングアルバム

 

 白石涼子としてのリリースは2011年8月のカバーアルバム『R02』を最後に途絶えていますが、2013年9月に久々のライブを行うことが発表され、音楽活動を再開する可能性も示唆されています。魅力的な歌声を持った人なので、継続的に音楽活動を行なってくれることを期待しています。